以下に示すのは、あるメルマガの文の抜粋ですが、
厚労省が行ってきた継続調査 ▽ を引用しながら
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/judan/seinen09/index.html
┌--------
2002年以降の、戦後最長ともいわれた成長期には、成長率こそプラスでは
あったが、雇用は不安定となり、貧富の差が広がり、食や医療の安全、教育の
充実が損なわれてきた。(中略)
(非正規職が増え、非正規職の人は結婚もしないし子供を持たないデータをと
らえ)――これは、最早国民生活の質が低下しているというレベルではない。
国や企業が成長を維持する為の効率化(雇用コストの流動化)の名の下に行われ
た雇用の不安定化が、結婚できない若者=少子化の直接の原因となっている。
つまり、成長率という隠れ蓑の陰で、この国を支えている世代が蝕まれてきた
のだ。
└--------
と指摘している。
また、それとは異なる厚労省の外郭団体・独立行政法人「労働政策研究・研修
機構」の調査をベースに、赤旗(05.08.24)は「少子化 低収入に関係」の見出
しで、
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-08-24/2005082404_01_2.html
┌--------
非正規労働者の結婚率は13%、正規社員の結婚率は40%。また30〜34
歳男性で年収250〜299万円では、結婚率42.3%なのに、年収500
〜699万円では71%と、格差がはっきりと現れている。
「調査は『男性は収入が結婚を強く規定している』と指摘。『無業で無収入な
ら当然結婚率は低くなる。少子化は晩婚化、非婚化の結果でもあるが、若者の
収入に大いに関係する』と分析しています」
└--------
と報じています。
前者は、エコノミストではないが株トレーダーとして名の知られた方である。
この頃よく見かける論理で、いわゆる小泉改革を、社会を崩壊させた新自由主
義だとして非難し、憤っておられる。
また後者は、共産党が常々主張する、低賃金だから結婚もできない、だから子
供も育てられない、という論理に合う厚労省の調査を、文句もつけずそのまま
使って自説を述べている。
確かにデータを見ると年収と結婚率の間に正の相関が見出せるように思える。
しかしこれらの結論のように、格差が少子化の原因と考えてよいのだろうか?
ーーーいままで、世代間格差問題を論じてきたが、今回はその問題の根本にあ
る少子化問題を検討してみたい。
子供を持とうとする動機は、「子供が好きだから欲しい」というような精神的
な動機(内因性の動機とでも名付ける)と「老後の面倒を見てもらう者がいない
と不安」のような社会経済的な動機(外因性動機と名付ける)とに区分されるだ
ろう。
内因性、外因性の動機があっても、経済的に育てられないからとか、子供がい
ると仕事ができないので困るなどの、子供を持ちたい願望を「阻害する要因」
として考えるべきであろう。
両者ともに、みんな子供を欲しいと思っているのに、お金がないから子供を産
まないのだと主張している。子供を持つことを低賃金が阻害しているというわ
けである。
本当にそうであろうか。
子供を持ちたいという動機が強ければ、日本では、現在でも婚外子を産むこと
はあまり良いことと思われていないので、まず結婚をすると考えても良いのだ
ろう。
結婚率の反対の未婚率(1−結婚率=未婚率)の時系列変化を本川裕氏のサイト
で見ると、→ http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/1540.html
1955年頃から、一貫して未婚率は単調に増加している。トレーダーや赤旗
の主張が正しいのであれば、未婚率が増えている1955年頃からは、日本は
貧しくなっていなければならない。
しかし昭和30年からは、所得倍増計画などで日本は豊かになってきたのであ
る。従って、彼らの唱える同一の時代の相関と、時代とともに少子化となった
原因とは同じではないのである。
統計データで人を騙すことは往々にしてなされるが、
少子化の一瞬の断面的データの相関関係で、少子化の時代的変化を説明するこ
とは大嘘付きなのである。この時間的な晩婚化・非婚化の進行は、その時代の
若者の価値観が変化したことに起因すると考えたほうがよいのであろう。
実は、少子化は先進国全てに共通する社会現象であり、しかも現代だけではな
く、古くはローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスの時代に明確な少子化の傾向
が現れ、皇帝は2つ対策法案を元老院に提案して可決させている。
ローマ人の物語で塩野七生氏はこのように書いている。
┌--------
紀元前1世紀末のローマが、貧しく、将来に希望が持てなかったのではない。
それどころか、反対であったのだ。ただ、子を産み育てることの他に、快適な
人生の過ごし方が増えたのである。
└--------
先程の非婚率の推移のグラフで、女性の非婚率を注意して見ると、1970年
から非婚率は増加の一途をたどるようになる。一方、日本女性の合計特殊出生
率のグラフを見ると、 http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/1550.html
1974年から、急激な減少が続き、それが少子化の原因となっている。
少子化の始まった時代は、希望のない時代ではなく、また貧しい時代でもなく
そして格差の減少している時代でもあった。恐らくその原因は、ローマ時代に
出現した少子化と大きくは変わっていないのではなかろうか。
本来的に子供を産みたいという内的動機はそう大きくなく、外的動機のほうが
より大きいのであろうが、それが他の喜びと比べた時に重視されなくなった結
果であろう。
昔は、子供がいないと農業ができなかった。働き手として子供が必要であった
し、子供がいないと老後の面倒も見てもらえなかった。
しかし、戦後はサラリーマンが8〜9割となり、働き手の必要性は極めて少な
くなった。また年金制度が完備し、介護保険も整備されて、老後のために子供
がいないと困るということもなくなった。
ーーーだから、豊かな生活をエンジョイしたほうがずっと楽しい人生が送れる
と思う人が多くなったとしても不思議ではない。
昔は、女性が少し適齢期を過ぎただけで「いかず後家」などと軽蔑する言葉が
あったが、現在では、世間の常識としても、結婚せず、男友達と遊ぶ女性を、
ふしだらなどと非難する風潮は最早ない。
= この稿つづく =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┃●┃ 読後アンケートの結果。
┗━┛
◇ この説に賛成 ---------------------------------------- 35人 (63%)
◇ どちらかといえば賛成 -------------------------------- 14人 (25%)
◇ どちらともいえない ---------------------------------- 2人 ( 4%)
◇ どちらかといえば反対 -------------------------------- 3人 ( 5%)
◇ この説に反対 ---------------------------------------- 2人 ( 4%)
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛
┌──────────「さぶろうさん」
賛成に投票しました。勉強になります。続編もがんばって下さい。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
応援のメールありがとうございます。お互いの知見を交換しつつ、少しでもこ
の国が良くなるような行動を心がけたいと思っています。
└──────────
┌──────────「lonsome carboyさん」
明治時代も戦前の昭和も、みんな貧乏だったけど子だくさんだった。
平和で、物質的にも経済的にも恵まれている現代だからこそ、少子化だろうと
思う。ーーー先進国病でもある。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
おっしゃるように、文明病の面が強いですね。平和が長く続くとこうなるとも
言われています。
└──────────
┌──────────「年金生活者さん」
かつて、子供は「生む」のではなく「生まれる」ものでした。あらゆる生物は
ヒトを含めて、子孫を残すために生きる。それが自然の摂理でしょう。
自然の反対概念は都市、城壁によって自然から隔離された空間です。ちなみに
civilization(文明)の語源はcivitas(都市)。
40年以上昔、アメリカの雑誌「TIME」で読んだ記事が妙に思い出されます。
ある研究所で、ネズミを過密状態で数世代飼育したところ、その生殖活動に異
常が現れたという実験報告でした。
┌--------
同性愛;未成熟のメスを犯すオス;インポテンツのオス;育児をしないメス;
捨てられた子供を食べる大人、妊娠率の低下と流産率の上昇;先天的異常児の
発生、闘争の増加、等々。
└--------
これらの現象を、人口抑制の生得的メカニズムと考えれば、ヒトもやはり動物
の域を超えていないということになります。
アウグストスの時代のローマは、巨大な城塞都市であり、人口密度はかなり高
かったと思われます。「子を産み育てることの他に、快適な人生の過ごし方が
増えた」とはいえ、ローマ人がセックス嫌いとは聞いたことがありません。
避妊・中絶の手段が未発達な時代、人口の減少は、ローマ市民の意志の結果と
いうより、生物学的なメカニズムが働いたと考えるほうが「自然」ではないで
しょうか。ーーーまた、当時、育児は奴隷の仕事でした。
「子供を持とうとする動機」を話題にする社会は、自然から遠くかけ離れてい
ます。「人間は自然を超越した理性的存在」であり、その行動は自らの意志に
よるもので、その理由は科学的に説明できると考えるのは、現代人のある種の
「信仰」と思われます。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
動物を過密状態にすると生殖行為に異常が出るという話は、私も他の本で読み
よく記憶しております。イナゴが異常繁殖をして草原や畑を食い尽くすのも、
イナゴが過密状態となった時だったと記憶しております。
ただ、ローマの過密状態は、カエサルの時代に城壁を取り払う街づくりをやり
始めていますので、酷い状態ではなかったと思われます。
ガリアを平定し、ゲルマニアからの侵入を防ぐ防衛線を確立したことにより、
ローマが、侵入してきた外敵に囲まれる危険性がなくなったことから、それま
での城壁の外側にも居住区を設けています。
城壁・門も場所によっては取除いています。
ローマの少子化は、パクス・ローマニアで、人生を楽しめる時代になったこと
が大きいのではないでしょうか。
ローマ人はセックス好きだったと思われますが、当時は不倫が当たり前だった
ようです。カエサル自身、不倫の名手だったと言われてますから。
└──────────
┌──────────「シンボーさん」
江戸に3代住むと、子種が絶える。という言い回しがあったはず。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
存じませんでした。でも、あるだろうなと思います。文明化は男をひ弱にしま
す。
精神的作業は下半身を弱くし、肉体的作業は強くすると俗に言われますが、首
肯できるものだと思います。
次のレポートにも書きますように、最近の若者男性の70%は、恋愛にもセッ
クスにも消極的だそうです。ーーー理解に苦しみます。
└──────────
┌──────────「まいさちさん」
ーーー私の体験から申しますと…。
バブル期は、忙しくて結婚を考える間がなかったです。
バブル直後見合いをしましたが、なんだか女性の考え方が変わってきているの
を感じました。〜〜〜一生独身でも良いという風に。
その後、会社倒産で派遣社員になりましたが、年収で見合いは断られました。
今は正社員になれましたが、独身生活が確立しましたので、もう結婚する気は
起きません。
私も含めた世間の考えが非婚化に向かっているところに、経済状況が追い打ち
をかけているということではないでしょうか?
考えが変わった原因については仰るとおりではないかと思います。他にもまだ
ありそうな気はしますが…。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
ご自身のご経験をご教示下さりありがとうございます。
私達の若い時代に、親や先輩によく言われましたのは、「一人口[ひとりぐり]
は食えないが、二人口は食える」ということでした。すなわち、経済的に一人
で生活できなくても、同じ給料で二人なら生活できるということでした。
家庭を持って、妻がやりくりすれば生活費は安くできるのだから、思い切って
結婚すればよいということでした。今はそういうことを言いませんね。
経済的に貧しいから結婚できない論ばかりです。しかしデータを見ても、結婚
したカップルは、年収とは関係なく子供を産んでおられますね。
└──────────
┌──────────「bystanderさん」
はじめまして。
この問題に、このようにゆったりとした見方で、落ち着いて考える事の大切さ
を再認識させてもらえるレポートです。
翻って、なんでもかんでも「小泉改革」に起因させる風潮は一体なんなんだろ
う? まだ「小泉改革」の定義やら歴史的位置付けやら全然定まってないよう
に思われます。今だからこその政治状況が依然進行中だからだと思います。
時の流れとともに何れ明らかになりますが、なんか維新前のその前みたいな位
置かな?と、私は肯定的に、不安とともに期待しています。
抽象的ですいません。理性的ないい文章を読んで、少し感傷的になりました。
└──────────
▼
┌──────────「紋起さんから」
仰る通りで、私は「小泉改革」は、極めて不徹底の改革の入り口でしかなかっ
たと思っております。世界に伍していくには、小泉改革を手始めにして、どん
どん世界の環境変化に対応しなくては、子供たちの時代に酷い目にあるだろう
と思っています。
しかし、極めて微小な変化で恐怖におののき立ち止まり、後すざりをやり始め
ましたね。恐怖を煽る不勉強なマスコミに扇動されて、明治維新前の「開国」
をなじっている状態だと思います。
└──────────