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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
☆ 急成長するインド・消費を支える貧困層の実態 ―― 2009/03/18
益々厳しくなりつつある世界経済、インド経済も影響を被っているが、傷は比
較的浅い。その理由は幾らでもあるが、

一番大きな理由は「これ以上生活レベルを切り詰められない最低貧困層」だが
「着実に生活レベルが向上している最低貧困層」の存在だろう。最低貧困層は
消費拡大効果をもたらすが、消費減少要因にはならない。

ーーー減少しようにも減少できない状態にあるからだ。

インド政府は、大票田である最低貧困者の保護政策を採らざるをえない。彼ら
に離反されれば政権を保てないからである。

インドの人口の大勢を占める最低貧困層が消費の減少を食い止め、むしろ商品
によっては消費を拡大しているのが実情である。

貧困層、最低レベルの生活状態にある階層は、
「指定カースト16.2%」「指定部族8.4%」「後進諸階級約27%」

人口11億5千万人の約52%が超低階層に当たる。=約6億人、そのうち、
約3億4千万人は一日1ドル以下の生活者であり、2億2千万人の栄養失調者
がいる。

この30年、栄養失調者は毎年1%強減少しており、2007年段階で人口の
19.2%になっている。1977年段階では人口の51.2%が栄養失調者
であった。如何にインド政府が貧困者対策に力を入れているかが判る。

「指定カースト」「指定部族」とは、「カーストがない階層のカースト」即ち
「アーリア人以外の5番目のカースト」である。

アウト・カースト、アンタッチャブル(不可触民)、ハリジャン(神の子)とも呼
ばれており、ダリットともいわれる。彼らは、インダス・ガンジス文明を興し
た民族の末裔であり、インドの原住民の末裔でもある。

アーリア人は原住民を奴隷にした。原住民との混血防止と社会秩序維持の為に
頭脳明晰なバラモンの僧侶が考案したのがカースト制である。

カースト制度が最終的に体系化されるまで1千年以上の時間を要し、ヒンズー
教と複雑に組み合わさって体系化されている。カースト制はヒンズー教と切り
離せない制度である。

カーストは‘色’と‘出自’と‘職業(サブ・カースト)’で分類されるが、基
本的に「浄の者」と「不浄の者」「浄・穢による分類」である。「不浄」「穢
れ」の原点は、生物の「死と血と産」と人との関わりにある。

「死と血と産」に関わる事とは、生物を殺す行為、死体に触れる行為、汚物・
塵芥に触れる行為、体から分泌する物や排泄物に触れる行為などである。

「血」と「分泌物」「排泄物」に関しては、出産行為なども含まれる。女性蔑
視の根源だろう。

土に触れる仕事も穢れた行為に看做される。これらの仕事は不浄の者=アウト
・カーストや農民の専門の仕事となり、穢れの分散・拡大を防止するため「世
襲制」が義務付けられた。

一方、穢れてしまったら必ず「お清め」をしなければならない。お清めが宗教
的慣習となる。ヒンズー教徒は毎日お清めをする。お清めは時にバラモンを必
要とする。当然、過分の「お清め料」「お布施」をバラモンに払う。

カースト制度はバラモンが儲かる制度でもある。

低位カーストであるシュードラは、アーリア人の農民階級であるが、原住民=
アウト・カーストの農民と大差はない。差は「カースト」を持っている事ぐら
いだろう。彼らが「後進諸階級」に当たる。彼らも「不浄の者」に入る。

この階層の職業は、農業・酪農は別格として、屠殺、死体処理、皮革関係、動
物飼育、汚物処理、清掃、産婆、洗濯、散髪、植木栽培などが典型的だが、そ
の他に、酒造、竹細工、金属細工、織物など、厳しい肉体労働の職業も入る。

医者も本来は穢れた職業に入る。冠婚葬祭に欠かせない芸人・オカマなどの職
業もアウト・カーストの職業である。穢れた職業、少なくとも500〜100
0種類はある。

地域により分類の仕方も職の名前も違う。職業を家名にする事が多い。従い、
家名から職業=カーストと出身地が判る。今から2千年ほど前に決められた職
業群、現在は規定されていない職業が多くある。ITなどは典型である。

独立後、国内産業保護政策を続けてきたインド。1991年に開放政策に転じ
て17年経つが、まだまだ国内市場に偏重した経済体制である。

都市市場20%、地方市場80%、地方市場は未だ開発途上、若しくは未開に
近い状態にあり、最低レベルで生活している貧困層が大勢を占めている。世界
経済の動向には殆ど影響されない市場である。

この貧困層の生活レベルが毎年着実に向上している。栄養失調者が毎年1%強
減少している事が、生活レベル向上の事実を証明している。栄養価の高い食事
が摂れるようになってきている証拠である。

可処分所得が増えている証拠に、農村でのシャンプーや甘い菓子類の消費が急
増している。戦後日本の成長期の現象と同じである。一度味わった生活レベル
を落とすことは難しい。「指定カースト」「指定部族」出身の国会議員による
「左派勢力」も力をつけ始めている。

世界景気後退の影響が出始めた9〜10月以降、インド政府は矢継ぎ早に景気
対策を打ち出し実施している。5月の総選挙を控え、早々と2009年度の予
算案を発表した。際立つのは貧民対策、貧民の可処分所得を増やす政策が随所
に見られ、効果を発揮している。

昨年から今年にかけての農作物の収穫は順調である。農業収入も増えているだ
ろう。農民・貧困層の生活が安定している限り、インドの経済が急激に落ち込
むことはない。逆に彼らの生活レベル向上=新規製品の需要が増えれば、飛躍
的に発展する分野も多くある。

マハトマ・ガンジーは「カースト制はインド社会の自然の秩序であり、カース
ト制を廃止すれば、インドは社会的・政治的に大混乱を生じさせる」と言い、
カースト制を否定しなかった。

インドの憲法ではカースト制の廃止を謳っているが、これがインド治世の本質
である。カースト制を一挙に廃止するのではなく、徐々に変質させていく、こ
れしか手立てはない、という結論に達したのだろう。

マハトマ・ガンジーが暗殺されてから60年経った。この発言に関しては賛否
両論あり、マハトマ・ガンジーの発言だけに重みがあり、カースト制廃止の障
害になっていると言う人も多く、特に仏教徒の反発は強い。

「指定カースト」「指定部族」「後進諸階級」の子弟の、国公立大学入学枠は
49%になった。国公立大学の卒業生がどのような活躍をするか、その意義は
大きい。国際社会ではカーストは意味を持たない。

インド国内で、カーストより能力を重んじる企業が増え、特に外資系の大企業
のインド進出が増えている。卒業者の中には、出身地で起業する者も出てこよ
う。企業のIT化、国際化、ネットワークの拡大は、低位カーストの有能な若
者の活躍の場を拡大している。

現在の職業には、2千年前の職業をベースに設定されたカーストには規定され
ていない新職業が沢山ある。能力重視の世界である。

低位カーストに与えられた下院の議席数は120議席ある。

最近は、低位カーストの議員を核とする「中道・左派政党」も成長し始めてい
る。連立政権が当たり前になっているインドの政治、彼らのパワーは無視でき
ない存在になっている。

低位カーストの子弟の活躍、これからのインドの成長のKEYになるだろう。

彼らの能力が発揮され始め、その成果が何かしらの形で出身地・地方に還元さ
れれば、地方市場の発展に大いに寄与することになる。教育がインドを変え、
カースト制をも変えていく。

ーーー徐々に、徐々に、ではあるが――――。

                        = この稿おわり =
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